三種会員企業
株式会社AK TEC 芥 美咲様
今回インタビューさせていただくのは、天理で鉄骨工事の鍛冶、鳶工事を請け負っておられる株式会社AK TECの芥美咲様です。
株式会社AK TEC様は、当機構の三種会員であり、日本財団職親プロジェクトの参加企業であり、もちろん奈良保護観察所の協力雇用主でもおられます。
更生保護の集まりでは、いつも明るい笑顔を振りまいておられ、とても印象に残る清々しいイメージの方です。
なぜ、この更生保護の世界に力を入れておられるのか、そのイメージからは想像もつかない思いをお聞かせいただきました。

株式会社AK TEC様のホームページ

NPO法人奈良県就労支援事業者機構 中野(以下、中野) : 本日はお忙しい中、そしてお暑い中、わざわざ当機構の事務所までお越しいただきまして、誠にありがとうございます。
株式会社AK TEC 芥 美咲(以下、芥氏) : いえいえ、こちらこそありがとうございます。今日はどうぞよろしくお願いします。
中野 : ありがとうございます。まず最初に、会社の事業内容をお聞かせください。
芥氏 : なかなか一言ではわかりにくい業態でして、当社のホームページにも書かせていただいているのですが、鉄骨工事の鍛冶、鳶を請け負っている企業です。いわゆる「足場のあるとび職」ではないんですね。半分以上が足場のない中で鉄骨で鳶をしています。よくとび職で応募して面接に来てくださるんですが、思っていたイメージと違うと言われます。


中野 : 協力雇用主になられた経緯と、これまでに雇用された方について教えてください。
芥氏 : 更生保護に関わったのは、「ある人」との出会いなんです。2017年に一般求人で、「ある人」を採用しました。3か月の試用期間中、1か月くらい経過した頃に、社会保険を受けるために必要なので「住民票」を取り寄せてほしいとお伝えしたんですが、待てど暮らせど持ってこないんです。
中野 : おお、それは焦りますね。試用期間が過ぎてしまいますね。
芥氏 : そうなんです。だから、こちらが痺れをきらして、呼び出して問い詰めたんですね。そうしたら「実は。。。」と経緯を吐露しだしたんです。
昔、反社会勢力に在籍していて、故郷で大きな事件を起こしてしまい、名前が知れ渡ったことで誰も雇ってくれず、ネットを通じて知り合った彼女のところに転がり込んだそうです。そして奈良で就職活動。
中野 : 更生しようと思って頑張ったけど、環境がそうさせてくれず、行き詰っていたんでしょうかね?名前が知れ渡っていない奈良の土地で仕事を得て、なんとかここで!と思っていたのかな?
芥氏 : そうだと思います。彼女と一緒にうちに話に来たんだけど、彼女も知らなくて、その時に初めて知る。という状態でした。
本人の話を聞いていた当社の代表が、その事情も知ったうえで、「これからは堂々と生きろ」と言われて、ボロボロと泣き出しました。ホッとしたんでしょうね。出所して5年間、職を転々と変えながら、誰にも話せず、一生懸命更生しようと生きてきたんだと思います。
中野 : なるほど。固くなっていた心が、代表の言葉でほどけたんですね。それからその方はどうなりましたか?
芥氏 : 今もわが社で働いてくれています。彼女とも結婚をして幸せな家庭を築いています。他の社員には黙っていたんですが、どうやら気持ちが解れたのか、自分からカミングアウトしていたようです。彼をきっかけに、もっと採用してみようとなったのが、更生保護の世界と関わりだした経緯です。
中野 : そのあと採用された方々はどうですか?
芥氏 : その後、少年院に直接出向き少年3名を雇いました。ハローワークからは、成人の方が2名です。残念ながらいまはどなたも残っていません。
中野 : なかなか定着しませんか?
芥氏 : 少年3人のうち、一人は再犯をしてしまい、ひとりは突然来なくなってしまいました。もう一人は、真面目に勤務してくれていたのですが、少し障がいがある子で、なかなか仕事の段取りを理解してくれずに難儀していました。まじめな子で一生けん命だから見ていて辛くて。だから、よく現場で一緒になる警備会社の方に彼を推薦しました。警備の仕事なら、ややこしい段取りや、修練が必要な技術は必要ないと思ったので。そうしたら有難いことに、雇っていただくことができました。いまもたまに現場で一緒になります。本人も仕事が合っているのか、いまは伸び伸びと働いています。
大人の方も、一人は再犯で捕まってしまいました。もう一人の方は、一生懸命働いてくれていたんですが、体力がなく、特に夏場は、見ているこちらが気の毒なくらいにボロボロで。だから彼に聞いてみたんです。「どんな仕事してみたい?」って。そしたらその子、車が好きで、ずっと車をいじってられる仕事がいいと言ったので、2人でハローワークに通って、1か月半、色々な会社に断られながら探しました。そして念願かなって、自動車工場の検査の仕事に採用されたんです。地道な作業ですが、本人は車の部品を触っているのがいいみたいだし、座ったまま仕事ができるので気にいってるみたいです。いまも連絡をくれています。


中野 : すごいですね。本当に職親、まさに親代わり。別にうちに居なくていい。君に合ったところを探そう。本来なら我々、就労支援事業者機構がやらなければならないことですね。ありがとうございます。今後も引き続き雇っていかれるのですか?
芥氏 : 実は先日少年院で面談してきた子が9月25日から入社する予定なんです。
中野 : お、それはまた楽しみですね。採用するときはどんな条件や、判断基準があるんですか?
芥氏 : それが、何もないんです。皆、可愛いし、何とかなると思っているし、合わなければまた仕事探せばいいかな。って思っています。
中野 : いや、本当に頭があがりません。
インタビューは2025年9月9日、NPO法人奈良県就労支援事業者機構の事務所で行いました。
ここに書いている内容は少ないですが、冒頭、業態の説明だけでも30分以上お話いただき(理解が追いつかない私の責任です、すいませんでした)、全体では1時間45分もお話しくださいました。心から感謝申し上げます。